インタビュー

広島在住のアーティスト iRespozy <音フェチ>インタビュー 。②「インスピレーションは、無意識の時にこそ湧いてくる」

極めてアブストラクトな環境音のコラージュから始まり、それに絡む無機質な電子音響。

難解なミュージック・コンクレート作品かと思いきや、ブレイクコアが顔を見せたり、時折ポップなシーケンスワークが現れたり。

iRespozy(イレスポジー)が今年リリースしたアルバム「Drawing of Sound」は、そんな一筋縄ではいかないバラエティーさが、聴くものを不思議な気分にさせる作品です。

くらんけブログでは、広島在住のアーティストiRespozyさんにインタビューを敢行。

「音フェチ」と自認する彼が紡ぐ音楽の源泉は、一体どこにあるのか?

自己のイメージを、音楽としてどのように具現化させてゆくのか?

前回に引き続き、広島市内の喫茶室にて和やかな雰囲気の中、お話を聞いてきました。

お待たせしました。今日はその第2回目です。

楽曲の作り方について。

──iRespozyさんの楽曲は、環境音や不規則な電子音など非楽音が多用されていますが、どのようにして曲として組み立てるのでしょうか?

iRespozy 環境音や、意図的にモノをぶつけたり擦ったりする音、kickだけの一小節、適当に弾いたメロディー、これらの短い音やループをAbleton Liveで加工しながら、継ぎ接ぎパズルの様にして組み立ててます。ほぼオーディオ波形だけで構築させて行く作曲手順です。

──MIDIはやられないんですか?

MIDIはループなどを、先ほど述べたソフトシンセで作る時だけ使う感じです。一旦オーディオに出力したサウンドを使って、音を伸ばしたり縮めたり、エフェクトをつけたりとかでやってるので、ほんとオーディオ波形のみですね。

──Ableton LIVEの「WARP」(フレーズのオーディオ波形全体や一部分を、伸ばしたり縮めたりできる機能)なんかを活用されながら。

そうです。たとえばCubaseだったら、こういうスタイルは出来なかったでしょうね。

──Cubaseは本当に「作曲する」って感じですよね。中田ヤスタカさんみたいな。

そうそう。今思い出したんですけど、中田ヤスタカさんが好きで最初Cubaseにしたんですよ。

──ところで楽曲を作る際は、ある程度「完成形」というものを意識されているのでしょうか。それとも感性の赴くままに?

イメージで作る曲と、行き当たりばったりで作る曲の両方があります。気分次第ですね。なんとなくパソコンを立ち上げた際にやるのは行き当たりばったりで、真面目にやる時には「設計書」みたいなのを書いて取り組んでいます。

収録曲『blind personality』について。

──このアルバム(Drawing of Sound)の曲の中で、特に印象に残っている作品はどれですか?

『blind personality』です。SpotifyとApple Musicで曲順が違うんですけど…

──ああ、そういえば。なぜ配信サービスで曲順を変えているんですか?

アルバムって基本、一曲目から聴きますよね。で、一曲目はどっちも一緒にしたんですけど、最後の方の曲ってなかなか聴かない人が多くないですか?

──確かに。

途中で別のことをやり始めたり、だいたい半分ぐらい聴いたら、みんな時間的に余裕がなくて聴けないってこともあるので…。21曲もあるし、まず全部聴いてもらえないと思ったんですよ。なので曲順をぐるっと真逆にする手もあったのですが、それはそれであまりバランスが良くないかなと思い、満遍なく聴いてもらうためにどうしようかと考えました。まあ、このやり方があっていたのかどうかよく分からないんですけど「ちょっと曲順を変えてみたんで両方聴いてみてね」って感じですかね。

──話を戻します。『blind personality』は7分超えの大作ですけど、やはり思い入れがあったと?

そうです。これ東京でライブした時に流したんですけど、リハーサルの時すごかったんですよ。「ヴォ〜ッ」て感じで。その時は自分がお客さん側に立って聴いてたのですが、これ、なかなか低音が出てるなって思いました。が、いざ本番になるとステレオ化されてなくて(笑)。

──あらら(笑)卓のL/Rを振ってなかったんですか?

振ってなかった(笑)。後で気づいて慌ててPAで直したんですけど…ライブ終盤になってお客さん側に行って音を確かめてたら「あれ?自分が作った音と違うな」って(笑)。ちょっといじったら良くなりましたけど。これ結構ステレオで低音がパンニングしてて…多分ライブで聴くと凄いですよ。

──Drawing of Soundは非常にバラエティーに富んだアルバムだと思うのですが、特にこの曲は低音あり、時折ビートあり、パンニングありと、そんなアルバムの縮図というか、名刺がわりの一曲だと感じます。

そうですね…ちなみにこの曲をさっきの東京のライブでやったら、途中で帰ろうとしたお客さんがいたらしくて。

──(笑)ほんとですか。

その後ピアノの音が流れて、そこらへんで帰るのをやめたっていう(笑)。笑い話ですけどね。長いんですが全部聴いて欲しいんですよ。これは7分に意味があるから。

──『blind personality』の制作時、何かイメージやコンセプトはあったのですか?

最初から最後まで完全に一緒じゃなくて、同じ様な展開からどんどん音が変わっていくのを表現したかったです。格段に「ガチッ」て変わるわけじゃなく、微妙にどんどん変わっていくっていうのが…長いんですけど、「自分は好きだ」って感じですね。

創作時のイメージ・インスピレーションの生み出し方について。

──作品を生み出すときのインスピレーションは、どのように湧いてくるのですか?

トイレ、シャワー、通勤時、仕事中、おやつタイムなど、基本的にボケーとしてる時に湧いてきます。何なんですかね…むしろ「意識をしない時にこそ」って感じですね。

──浮かんだイメージをメモったりとか?

ああ、メモりますね。iPhoneでパパっと打ち込んで。自分、音符がわからないので「日本語」で書くんですよ。「3秒で、その後ドカン」みたいに。自分だけ分かるみたいな(笑)。

──自分の感性で、オノマトペ的な。

(笑)そうそう。

これから挑戦したいこと。

──最後に、これからの活動や挑戦したいことなど、目指すビジョンがあれば教えてください。

アート系のコンペティションに参加したいです。2年前の「県美展」(広島県が主催し、県民から応募のあった美術作品の中から優秀作を、広島県立美術館をはじめとする県内各会場で巡回展示する美術展)に映像部門で応募し、上映させてもらいました。賞は取れなかったのですが「入選」みたいな結果でした。

──どんな評価でしたか?

審査員の方から、映像の応募作品全般に関して「物語性がない」というコメントがあって、なるほどなと。ただ映像的に面白いだけじゃ…「で、何が伝えたいのか?」みたいな評価でした。なので今年は、物語性のある動画に音楽をくっつけてコンペに出そうと思ってたんですけど思いつかなくて…。難しいですよね。応募するなら大賞を狙える作品じゃなければ意味がないと思ったので、今回は見送りました。

──来年再チャレンジですね。

ストーリーを考えるのは難しいので、今度はおそらく造形物ですね。映像っていくらでもコピーできるじゃないですか。なので作品として残るもの…複製のきかない「物体としてある」ものを作りたいです。ついでにそれらを、自身のアルバムジャケット素材にします。

──音楽面ではどうでしょう。

Max/MSP(音楽と映像向け統合開発環境。ビジュアルプログラミング言語で、Maxパッチで独自のコントロール・インターフェースを開発できたり、オリジナルのシンセを作れたりできる。)のサウンドプログラミングを真剣に取り組みたいです。

Maxの画面。出展:https://www.mi7.co.jp/

──開発になりますし、大変そうですね。

Maxって見た目はマニアックですけど、プログラミング言語をバーって打ち込むというより、モジュールを組み立てるみたいな感じなんですよ。まだやってないんでわかんないんですけど(笑)、見た目が楽しそうなんですよね。

──ミュージシャンとしての活動については。

知名度のある海外のレーベルから音源を出したいです。そうじゃないと聴いてもらえないので。プロモーションとかをレーベルがやってくれますし。でももう少し、自分でBandCampとかで出しますけどね。最終的にはレーベルを立ち上げて、エクスペリメンタルよりの、自分好みの音楽を普及させたいですね。

iRespozyさんとは、これまでネット上(ツイッター)での交流はありましたが、このたび実際にお会いでき、とても興味深いお話を伺うことができました。

初対面でありながらインタビューをという不躾なお願いにも関わらず、とても紳士的にご対応いただきました。

楽曲の制作手法や機材といったノウハウや、アーティストとして創作に向き合うストイックな姿勢をも知ることができ、大変濃密な時間を過ごすことができたと思います。

そんなiRespozyさんの奏でる、深淵でスケールの大きな音世界に触れてみてはいかがでしょうか。

「Drawing of Sound」配信サイト

Bandcamp

Apple Music, Spotifyなど

(了)

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